「the OA」やら「ストレンジャーシングス」やら、有名どころが見終わった自分は新たなネトフリドラマを探していたんですよ。そこでとうとう”とにかく後味が悪い!”ってウワサのドラマにたどり着いてしまったわけなんだけど…。
ネタバレの前に、まず話を聞いて。
ブラックミラーシーズン1第1話はこの「国家」という作品なんだけども、自分シーズン4が選択されてたのを気づかなくて、シーズン4の1話である「宇宙船カリスター号」を先に見てしまったんですよね。
すごい引き込まれるし面白くて、後味も思ったより悪くなくて一瞬にしてこのドラマの虜になったんですね。
更にシーズン4の2話「アークエンジェル」まで見終わったところで、自分が馬鹿やらかしてた事に気づくわけです。
それでやっとこの原点にたどり着くわけでしょ。
すっげー胸糞悪い。一部始終を通勤中の電車の中で見守ったけど、ぐったりしちゃって降りる駅乗り越しそうになるほど。そんなストーリーです。
以下、ネタバレとなりますのでご注意を。
ブラック・ミラー シーズン1 1話「国歌」
誘拐事件
ある夜、就寝中のイギリス首相に1本の電話がかかってくる。なんと、王家の血筋であるスザンナ妃が誘拐されたという。
首相の元にはスザンナ妃を使った脅迫ビデオが届いており、スザンナ妃の命を救えるのはマイケル首相ただ1人だという。その要求とは”今日の午後4時、マイケル首相がテレビに出演し、ブタと性行為をすること”。
ビデオはYoutubeにも上げられ、この情報は国民の元へも知れ渡っているという。
あまりに異例の事態に驚き、混乱するマイケル首相だったが、ひとまずは事の成り行きを見守るしかなかった。
混乱
テレビ局では、ブタとの性行為という不適切な表現を巡り、物議を醸していた。報道では過激な表現は控えなければならないが、真実はネットで拡散されている。
国民たちはテレビやネットにくぎ付けになり、この不可解なニュースを傍観していた。
首相の妻もその1人だ。”ブタとセ○○ス?”と自身の夫がネットで馬鹿にされる様を、ただ指をくわえて見ているしかなかった。
痺れを切らした妻は夫マイケルと側近たちがいる部屋に乗り込み、自分の夫が世間にあざ笑われるのが辛いと打ち明ける。「愛してる」と涙を流す妻を、マイケルはそっと抱きしめた。
首相の側近たちは、首相には極秘で代役を使って撮影する案を進めようとする。代役にはAV男優を使い、映像技術で顔だけ合成するという魂胆だ。
そんな時、映像から犯人が潜伏していると思わしき場所が特定される。が、タイムリミットまであと3時間を切っていた。
「部隊が突入に失敗しても、国民は要求の拒否を望んでいます」
眉間にシワを寄せるマイケルに側近が言う。国民はとんでもない要求をされた首相に同情的だった。
指
首相のニュースを流すテレビ局の裏では、番組のスタッフ宛に何やら小包が届く。箱を開けると、中にはUSBと人間の指が。
USBを開くと、”代役は許さない”とのメッセージと、スザンナ妃の指を切る映像が映し出された。誰かが撮影所に入る代役をネットにアップしたことで、犯人に代役案がバレてしまったようだ。
怒った首相は側近のひとりにつかみかかる。苦しむスザンナ妃の映像が公開されてたことで、首相に同情的だった国民は”首相はやるべきだ”という流れに一変した。
首相は犯人の潜伏場所への突入命令を下す。しかしそこに犯人の姿はなく、ネタ欲しさに侵入していた報道陣の女性がひとり、怪我をして犠牲になっただけだった。
その一部始終を部隊の中継を通して見ていた首相は、やり場のない怒りに頭を抱える。
「政治家として名誉を失い、人間としても軽蔑される。やるしかありません」
側近に強く念を押されるマイケル首相。中継の手配も済んでいるという。
首相の決意
その日の15時半、首相を乗せた車は撮影所へと向かっていた。妻からの電話にも応答せず、首相はただ車に揺られることしかできなかった。
多くの国民たちが、テレビの前で首相の行く末を見守る。
「途中でやめるとルール違反になります」
「念の為、援助する映像を視線の先で流します」
とうとう、部屋の前まで来てしまったマイケル首相。その傍らで、側近が淡々と説明する。
「心理学者の意見では、快感を得たと思われないよう、十分時間をかけるべきだと」
首相の目の前には、今回愛し合うべき相手である、餌を食っている豚の姿が。
もはやどうにも表しようのない表情マイケル首相を、酒を片手に笑みを浮かべて傍観する国民たち。
「私は、妻を愛している。神のお許しを」
ズボンを下ろし、豚に近づくマイケル。
実際行為が始まると、さっきまで笑みを浮かべていた国民たちの表情は一転し、皆苦い表情を浮かべ、画面から目を逸らした。
それから1時間以上に渡り、涙を流しながら首相は戦った。
「酷すぎる。気の毒に」
中継を見ていた国民はそう呟くのだった。
結末
トイレに籠る首相の傍で、側近のひとりがスザンナ妃保護の連絡を受ける。
スザンナ妃は無傷で、あの時切られた指もスザンナ妃のものではなかったという。
そして解放されたスザンナ妃の姿は、なんと15時半の時点で防犯カメラに映っていたという。15時半といえば、まだ首相は車の中にいた時間だ。
首相が豚に対して行ったあれこれは、全部無駄な行為だったということだ。
「なぜそんなことを?」
側近が電話の相手に問うと、”誰もがテレビに夢中になるということを犯人が見抜いていたからでは?”と返答された。
それこそが犯人の声明なのだと側近は悟る。
「その情報は抹消して極秘に」
そう言い放ち電話を切る。そしてトイレの向こう側の首相に向かってこう言った。
「スザンナ妃は無事です。首相が救いました」
それから1年後。テレビのニュースには、妻と笑顔で並ぶマイケル首相の姿が。
結局事件の犯人は芸術家の男で、事件の後首を吊って自殺した。
そしてテレビの中継を終え自宅へ入った途端、先程まで笑顔だった妻が冷たい表情でマイケルの声を無視。マイケルの哀愁漂う後ろ姿でこのストーリーは終わりを迎える。
感想
私はてっきり、メンタリストの如く犯人探しが始まると思ってたんだけど、違った。
よそのサイトさんみたくあまり小難しい考察は書けませんが、これって割と今のネット社会そのものだよね。
この作品のメインは首相ではなく国民の方だと自分は思ってる。
まず事件が起こった時、人々はまるで一種のエンターテイメントでも見ているようにこの話題性に溢れた事件を楽しむ。そして一度は首相に同情し、ほとんどの国民は放送を見ないと答える。
しかし首相が代役を使って済ませようとしていることが明るみに出るところっと態度を変え、今度は首相を集団リンチにかける。実際首相が命じたことではないなんて裏の事情はつゆ知らず。
時間になれば外には人っ子一人気配なく、みなテレビの前に釘付け。「苦しめ!」と血祭りにあげていた首相が実際見てるこっちが気分悪くなるくらい苦しんでいると、群衆は揃って目をそらす。
自国の首相の悲劇さえ、もはやエンターテイメントの1つと化してしまったわけです。
こんな世界は嫌だけど、実際こんな時代が訪れる日がきてしまうのかもしれないね。
そして今のテレビ番組というか、報道に対する皮肉も感じた。
報道側がどんなに表現に頭を悩ませようが、国民たちはネットで全貌を知っている。「性交渉」が「豚との性交渉」だということを誰でも知っているわけだ。
事件から1年後、以前より支持率の上がったマイケルをまるでヒーローの如く持ち上げ、首相夫妻の笑顔を映すが、その笑顔はまったくの嘘っぱちで、夫婦仲は完全に冷め切っている。
もはや、テレビで本当のことなんてあるの?って疑ってしまうくらい。
そして最後、妻がとにかく残念。
妻が大事にしていたものは、国でもなく夫でもなく、自分自身の世間体。
あの妻にとっては夫が”スザンナ妃殺し”のレッテルを背負った方が良かったってことでしょうか。
1話目からブラックすぎる内容のこのブラックミラー、1話完結ものなんで2話目はまた全然違った内容になってますので、興味惹かれる方はぜひ2話目以降も見てみてね。
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