1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今回のシチュエーションは「VRの格ゲー」ですが…予想を遥かに上回る意外な展開です。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 5-1【ストライキング・ヴァイパーズ】
リアルなゲーム
愛しい妻と子供と幸せな生活を送るダニー。ダニーの38歳のバースデーパーティーで、昔ルームシェアをしていた親友カールと再会する。
カールはダニーへの誕生日プレゼントに、昔よく一緒にプレイしていた格闘ゲーム「ストライキング・ヴァイパーズ」の最新版をプレゼントする。昔は2Dだったが2人の年齢同様にテクノロジーは進化し、今ではVRになっていた。
その夜、妻のセオはダニーをベッドに誘うが、ダニーは「疲れているから」と誘いを断る。セオが寝静まった後、ダニーが1人でゲームをしているとカールから電話がかかってきて、プレゼントしたゲームを一緒にやろうと誘われる。
チップを頭に装着し、カールは「ロクセット」という女性キャラ、ダニーは「ランス」という男性キャラを選び、いざゲームの世界へ。
まるで本当にゲームの世界に入ったかのようなVRのリアルさに戸惑うダニー。ダニーもカールもそれぞれ選んだキャラクターの姿をしており、操作の必要なく技が繰り出せる。
バトル開始早々、カールことロクセットにボコボコにされるダニー。徐々にダニーも感覚を思い出し、乱闘の末2人はもつれ合いながら床を転がる。
女性キャラのカールと男性キャラのダニー。次第に2人の唇は近づき、キスをしてしまう。
2人は驚き、急いでゲームを終了させるのだった。
奇妙な関係
普段通りの生活を送るも、あの時のことが頭から離れないカールとダニー。夜、ダニーがゲームをしていると、またしてもカールからゲームの誘いを受ける。
「あの日は酔ってたんだ。今度はちゃんとやろう」とダニーが制し、再びバトルを始める2人。徐々に間合いを詰めていき…2人はゲームの中で激しく交わるのだった。
「これってゲイってことだよな?」と冗談めかして言うカール。話の途中でダニーは息子に呼ばれ、この日のゲームは終了する。
それからの2人は暇を見つけてはゲームの中で交わりあっていた。お互いに恋愛感情などはないはずだが、ダニーは以前より妻を拒否するようになり、カールも相手がいるもののの満足できなくなる。
ある日ダニーは結婚記念日のディナーでセオに「最近のあなたは私に触れようともしなくなった」と涙ながらに指摘される。「浮気しているなら正直に話して」と言われるも、ダニーは「誓って浮気なんかしてない」とセオの手を握る。
ダニーはゲームを戸棚の奥へとしまい込み、カールに「あれはもうできない」と電話をかけ、2人の奇妙な関係は終わりを迎える。
求める相手
7ヶ月後、再びダニーの誕生日がやってくる。あれからセオは妊娠し、夫婦生活は再び順風満帆へ戻った。
しかしセオがサプライズとしてカールを夕食へ招き、2人はまた再会してしまう。セオが席を外している間、「大勢と試したが、それでもお前を忘れられなかった」とカールに告げられるダニー。
その夜、欲望に耐えきれなくなったダニーは再びゲームを起動させ、カールとの情事に耽る。
行為の後、女性キャラのまま「愛してる」と囁くカール。この奇妙な関係性に頭を悩ませるダニーは、30分後に会おうとカールをある場所へ呼び出す。
雨の中やってきたカールに、ダニーは関係をはっきりさせるため「キスしよう」と提案する。2人はキスをするが、お互いに何も感じない。
ゲームを終わらせたいダニーと続けさせたいカール。2人は口論になり、次第に殴り合いの喧嘩に発展して警察沙汰になる。
ダニーを迎えにやってきたセオに「何があったの?」と問いかけられ、ダニーは妻にすべてを告白するのだった。
月日は経ち、ダニーの40歳の誕生日。セオは「誕生日おめでとう。朝には返してね」とダニーにマッチ箱を渡し、結婚指輪を外してバーへ出かける。
ダニーはマッチ箱の中のチップを取り出し、頭に装着する。ゲームの中でカールとダニーが激しくキスを交わすシーンで物語は終了する。
感想
この作品のことを一言で言い表すとしたら、「予想の斜め上」。ゲームがテーマの作品、格ゲーっぽいサムネを見て、この展開を予想できる人間が一体どこにいると?
ゲームの中ではカールは「ロクセット」という名のかわいい女性キャラ、ダニーは「ランス」という名の筋肉ムキムキで男らしい男性キャラになりきっています。ゲームはほぼ鉄拳。
普通VRで格ゲーなんかできたら大喜びでひたすら技繰り出してると思うけど、だんだん近づいていってキス…っていうのは、男の人なら一度は考えたことあるシチュエーションなの?確かに格ゲーの女性キャラクターはセクシーなのが多いですけど…
ゲーム以前の問題として、ダニーは妻に対して欲情しなくなっているという典型的な夫婦間の問題を抱えています。妻のセオの方はダニーを求めるも拒否され続け、バーで男に声をかけられ心が浮き立つものの指輪を見せて断るシーンもあり。
カールは毎晩のように別の相手をとっかえひっかえして楽しんでいる。そこで再会したダニーとゲームでこんなことになるけですが…2人とも最初のキスは事故のようなものだったのでしょう。
ダニーとカールに恋愛感情はあるのかないのかという問題、私はないなと感じました。ダニーは妻を拒否するものの若い女性を目で追いかけるシーンは何度も出てきたので、「妻を女性として見られない」というか、単純に若い子になら魅力を感じたんでしょう。
一方のカールはいい歳ながらも相手をとっかえひっかえ、性に対して貪欲なイメージ。女性キャラになっていたカールは「女性としての快感を感じている」と話すシーンもあったので、カールはランス(ダニー)から与えられる快感に溺れてしまったのでしょう。
つまりカールとダニーが惹かれあっていたわけではなく、ゲームの中のお互いがたまたま求めていた相手だったという結論に至りました。
ラスト、ダニーは誕生日にセオからゲームのチップを渡され、セオは指輪を外してバーへ。これはお互いこの日だけ自由にしていいという妥協作をとったということだよね。
ダニーの誕生日は作中3度出てきたけど、ラストのパーティーが1番賑わっていて、セオとの仲も良好に見えた。でもその夜はお互い別の相手と楽しんでいるわけで…夫婦って難しいんだなとつくづく考えさせられました。
しかし、1年に1度だけ許されるカールとダニーの仲…正に織姫と彦星。ラストのロクセット&ランスの絡みもなんだかロマンチックに思えました。
ブラックミラーの中では後味もそんなに悪くなく普通に面白い作品だけど、いかんせん絡みシーンが多く誰かと見るとたまらなく気まずくなるので、部屋で1人での鑑賞がおすすめです。