1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今回のテーマは現代社会にも欠かせない存在の「SNS」です。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 5-2【待つ男】
誘拐事件
タクシー運転手として働くクリストファーは、ある目的のため「スミザリン」という名の大手SNS会社の社員が自分のタクシーに乗るのを待ち続けていた。
やがてスミザリンの若い男性社員がクリストファーの運転する車に乗り込む。クリストファーは人気のない場所へ車を停め、銃を向け男性を脅す。
男性はジェイデンと名乗り、スミザリンでインターンをしている新人だという。クリストファーは人質にとったジェイデンが自分の目的を達成できる人物でないと知り、癇癪を起こす。
隙をついて逃げ出そうとしたジェイデンを拘束し、頭に袋を被せてクリストファーは再び車を走らせる。しかし運悪く、袋を被ったジェイデンの姿を警察に見られてしまう。
警察に後をつけられ、もはや逃げられないと確信したクリストファーは車から降り、警察の目の前でジェイデンに銃を突きつけるという強行手段をとる。警察が距離をとったことを確認すると、クリストファーはジェイデンに「社長のビリー・バウアーと話がしたい」と要求するのだった。
クリストファーは新人のジェイデンが唯一知る上司のハンナに電話をかけさせる。電話に出たハンナに、クリストファーはビリー・バウアーと話がしたいと言う。
待つ男の目的
ハンナはクリストファーを保留で待たせている間、速やかに他の社員に知らせ、警察と連携をとってクリストファーの情報を特定する。警察の家宅捜索により、クリストファーの氏名と元教員という職業、過去に交通事故で婚約者を亡くしていることなどが判明する。
単なる身代金要求の事件ではないと察知したスミザリン社員は、異郷の地で沈黙瞑想をしているビリーに事件を報告する。
保留の電話を待ち続ける間、クリストファーはジェイデンに「年齢は?」「彼女はいるか?」と話しかける。ジェイデンと会話するのち、「この銃は偽物だ」というクリストファーの一言が警察に盗聴されてしまい、狙撃手はクリストファーの車目掛けて銃を発砲する。
銃弾はクリストファーに当たらず、電話から盗聴されていると知ったクリストファーは、5分以内にかけ直さないと人質を殺すと言い放ち電話を切る。程なくして、ついにクリストファーの元にスミザリンの社長ビリー・バウアーから電話がかかってくる。
やっと繋がった電話で、クリストファーはビリーにある話をする。
かつてはスミザリンのヘビーユーザーだったクリストファー。3年前、クリストファーの運転する車で婚約者と家に帰ろうとしている途中、スミザリンの通知で脇見運転をして衝突事故を起こし、婚約者を死なせてしまう。
相手の車の運転手も死亡したが、相手が飲酒していたため飲酒運転による事故」と認識されクリストファーは周りから同情される。婚約者の親にまで同情され、クリストファーは罪の意識に苛まれる。
クリストファーがビリーに電話をかけた理由は、スミザリンの製作者であるビリーにこの話を聞かせるためであった。
クリストファーの話を聞いたビリーは、もはや製作者の自分でもスミザリンを食い止められないこと、ビリー自身もこの状況が嫌で、辞職を考えていたことを打ち明ける。
ビリーがジェイデンを解放してくれと頼むと、クリストファーは「ジェイデンを解放して俺は死ぬ」と告げる。
ビリーの電話を切った後、約束通りジェイデンの拘束を解くクリストファー。しかしジェイデンは車から降りず、必死にクリストファーが自殺を止めるよう説得する。
無理やり銃を奪おうとしたジェイデンとクリストファーが揉み合いになり、狙撃手の銃声が響くシーンで物語は終了する。
感想
今や我々の生活でもなくてはならない存在となった、SNSをテーマにした作品でした。話の内容から察するに、スミザリンはFacebookやインスタに近いSNSではないかと思われますが、この話のテーマはどのSNSにも共通でしょうね。
視聴者の想像を掻き立てる終わり方ですが、恐らくラストの銃声でクリストファーは死亡したものと思われます。クリストファーの自殺を止めるための揉み合いだったものが、警察にはクリストファーが暴れていると判断され射殺されてしまういう…。いつもの「ブラックミラーらしい後味の悪さ」とは違い、切なくて無念なラストでした。
結局クリストファーのビリーに対する目的は、ビリーを責めるわけでなく、スミザリンの「誰もが目が離せないようにする策略」による1つの事例をビリーに話したかったというだけでした。クリストファーが作中で言っていた通り、「いちユーザーからのレビューみたいなもの」という表現が正しいかもしれません。
そして開発者のビリーもまた、もはや自分の作りたかったものとは別物へと変化していったスミザリンに嫌気が差し、辞任しようと考えていました。クリストファーから電話がかかってきた時、ビリーは実はその事を考えるために異郷の地で休暇をとっている最中でした。
そんなビリーと人質にとられたジェイデンは、最後までクリストファーの為に行動しようとしていた。クリストファーの置かれた状況が絶望的だっただけに、この2人の優しさが救いでした。
「SNS依存による事故」というクリストファーの置かれた状況は、現代の誰にでも起こりうることであまりに身近なだけに、とても恐ろしく深く考えさせられるテーマでした。実際スマホのながら見で事故というニュースは何度も聞いた事があるし、自分自身もそれでハッと怖い思いをしたことがあります。
街中見ていると歩きスマホなんてもはや当たり前だし、運転中でも信号待ちの間にスマホチェックなんてザラ。でも作中のクリストファーの”たかだか自分のコメントについたいいねの通知を見たがために婚約者を死なせてしまった“状況と同じく、大事になってしまった後考えると、私たちがながら見しているものなんて、所詮は「そんなもの」なんですよね。
「大したことのないもの」と頭でわかっていたとしても、スマホを開くと真っ先にSNSを開く癖までついていたりします。SNSに飲み込まれるような人間にならないようにせねばと改めて実感しました。
エンディングソングは「アイラ〜ビュ〜ベイ〜ベ〜」のフレーズでおなじみの「Can’t Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」。幾度となく耳にしてきた曲ですが、この曲がこんなにも自分の中で意味を為したのは初めて。
タイトルでもある「君から目が離せない」という言葉は、文字通りSNSから目が離せなかったクリストファーを含め、今この瞬間もSNSから目が離せないすべての人達への皮肉を感じました。個人的にサン・ジュニペロに続く良エンディング。
全てにおいて完成度が高く、面白い作品でした。シーズン5で1番面白いと称されているのも納得です。
SNSに飲まれ気味な多くの人に見て欲しい。