1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今回は現代でも既に普及している「マッチングサービス」がテーマです。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 4-4【HANG THE DJ】
フランクとエイミー
99.8%の確率で、ベストな恋愛パートナーに出会わせてくれるマッチングサービスに登録したフランク。サービスを開始して初めての夜、フランクはエイミーという魅力的な女性と出会う。
“コーチ“と呼ばれるそのシステムでは、ディナーのメニューは勝手に決められ、ディナーの後に行く場所の送迎までしてくれる。更には2人の交際期間も決められている。
フランクとエイミーが互いに交際期間を確認すると、”12時間“と表示されている。ディナーもそこそこに、2人は送迎車に乗せられ”住居”へと移動させられる。
ベッドが1つしかないことに戸惑う2人。しかしその夜は手を握っただけで、エイミーとの短い交際期間は終了してしまう。
あまりにも短い交際期間に疑問を抱くフランクとエイミー。2人はそれぞれコーチに質問するが、どんな相手とも指定された期間を一緒に過ごさなければならないこと、数々の交際を繰り返すうちに最後にはベストな相手を見つけ出すことができると説明される。
決められた交際期間
次にエイミーが出会ったのはスマートなイケメンで交際期間は9ヶ月。フランクはキツい性格の女性で、相手もフランクのことが気に入らないが交際期間は1年。
ある日パートナーとパーティーへやってきたフランクは、エイミーの姿を発見し声をかける。自分とは真逆にパートナーと上手くいっているエイミーに複雑な心境のフランク。
しかしエイミーも内心、フランクの事が気になっているのだった。
9ヶ月後、フランクより先にパートナーと交際終了したエイミーはその後も次々と別のパートナーと交際する。一方のフランクは、やっと1年という苦しい交際から解放される。
フランクが次の相手とのディナーにやってくると、そこにはエイミーの姿が。初めての相手だったこともあり、再びマッチングしたことを喜び合う2人。
システムに疲れていた2人は、今回は交際期間を見るのはやめようと決意する。
最初の夜は手を握るだけで終わってしまったものの、今度はいつ交際終了するかわからないという不安定な状況。2人は時間を惜しみ、お互いにとって1番情熱的な夜を過ごす。
確実に惹かれあっていくフランクとエイミー。あとどのくらいエイミーといられるのか不安を抱いたフランクは、我慢できず勝手に交際期間を確認してしまう。表示された期間は5年だったが、フランクだけが勝手に見てしまったことによりペナルティが科せられ、残りはわずか20時間に変更されてしまうのだった。
フランクの態度が急におかしくなったことに気づき、理由を問い詰めるエイミー。フランクは勝手に交際期間を確認したことを告白する。
「約束したのにどうしてなの?」とフランクを置いて立ち去ってしまうエイミー。最悪の形でタイムリミットを迎え、フランクはエイミーのいない家で1人、涙する。
その後もそれぞれ別の相手と交際するが、ついにエイミーはコーチから運命の相手が選定されたと聞かされる。コーチによれば、明日、早くも運命の相手とこの場所を出て行くという。
ペアリングの前に、1人だけ希望の相手と最後の面会ができるシステムがあるとコーチは続ける。考え込んだ末、エイミーはプールの中に端末を投げ捨てる。
2人の決意
エイミーがいつものテーブルへ向かうと、最後の面会相手として選んだフランクが座っている。エイミー同様、明日ペアリングだというフランク。しかし2人の気持ちはもう固まっていた。
「ここに来る前、どこにいたか覚えてる?」とエイミー。2人ともここに来る前の記憶はなく、しかしお互いが出会った時初対面ではないような気がしたと言い、これは”テスト”として何度も繰り返されているのではないかという結論に達する。
「ここから逃げ出そう」と走り出す2人。外へ出ると、2人の目の前に高い壁が立ちはだかる。
2人が壁を登り頂上まで達すると…。
そこには無数のフランクとエイミーの姿が。2人の上にはそれぞれ別の数字が表示されている。
逃げ出したフランクとエイミーの上には「998」という数字が。「シュミレーション完了」の文字と共に、仮想空間は崩壊する。
時は現代、クラブでマッチングアプリを操作するエイミー。エイミーのスマホの画面にはある男性の顔と、99.8%の数字が。
同じクラブ内にいるフランクの画面の中にも、99.8%の数字と共に女性の顔写真が表示されている。
顔を上げた瞬間、フランクとエイミーがお互いを見つけ出し、微笑み合うシーンで物語は終了する。
感想
現代でも既に男女の出会いの基盤となっている「マッチングサービス」がテーマだった今作。現代にもあるリアルなテーマだったからにすごく面白かった!!
今作はブラックミラーの中でも特に人気作として名が上げられていますが、納得です。最後の感動は一体何なんだろう。だってテーマはマッチングサービスなのに!
色んな人におすすめしたいけど、いかんせんヤッてるシーンが多くて誰と見ても気まずくしかならないので、不用意におすすめできないという悲しみ。
フランクとエイミーが奮闘していたのはあのアプリの中の仮想世界だったというオチでした。最後のフランクとエイミーの頭上の「998」という数字は、システムに抗った回数。同じ空間にいた無数のフランクとエイミー達は、それぞれ「1〜997回目に抗った2人」ということになります。
そして998という数字は、システムが謳っている99.8%と同じ。シュミレーションして998回抗った相手がベストパートナーとしてマッチングされる仕組みなんでしょうね。
「いろんな相手と交際してベストな相手を選んでくれる」システムかと思いきや、まさか抗ってなんぼというオチとは。でも確かに、決められて「ふ〜ん」って感じで何の疑問もなく一緒にいてしまう相手より、「何もかもぶち壊してやろう!」くらいの気持ちの強い情熱が必要かもな〜と実感しました。こういう恋愛が理想だよねやっぱり。
現代におけるマッチングサービスもそうだけど、そういうお膳立てされた状況下で強い情熱を持った恋愛ってなかなか難しいよね。それをあのシステムの中で体験できるというのだから、やっぱりあれは凄いんでしょうね。
自分はやっぱり実際に経験したいな〜と思ってしまうけど。
ラスト、2人が顔を合わせて微笑み合うシーンが意外と長くて意味深。お互い初対面なんだろうけど、システムの中でのことがぼんやりとでも記憶にあって、「やっと会えたね」的な意味合いを持つ微笑みにも見える〜。
ちなみにタイトルの「HANG THE DJ」は直訳すると「DJを吊るせ」という意味。この作品に当てはめると「システムに抗え」という意訳が近いのではないかなと思います。
現実ではまだ始まってもいなかった(?)2人の恋だけど、システムの中ではお互いいろんな相手と付き合ったり別れたりして、少なくとも1年以上の月日をあの中で過ごしたということになっていました。これ、シーズン2最終話の「ホワイト・クリスマス」に出てきた、あのタマゴ型の装置を思い出しました。
それからシステムの中の世界に登場する「その他の人々」と「警備員」。警備員はコーチと同じく2人を抗わせるためのスパイスのような存在で、「その他の人々」はあくまで2人の世界の中ではCPUのような存在だけど、実際はシステムを利用している他の男女がモデルになっているのではないかと思います。
余談だけど、この作品を見て”某メンタリストが監修している性格・心理的に相手を選ぶマッチングサービス”が頭に思い浮かびました。(これは現代にバリバリあるマッチングサービス)
こういうので誰かとマッチングする時、実際時間は一瞬の事かもしれないけど、もしかしたらどっかのサーバーか何かに自分の分身がいて、その一瞬の間に付き合ったり抗ったりを繰り返したりしてるのかも…と思うとすごく面白い。
もし「マッチングですごくいい人と出会えたけどこれといった情熱が感じられなかった」という人がいたら、この考えで少し救われるかもしれないね。