1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。シーズン1は3話構成で、今作が最終話となります。
自分の中ではシーズン1の中で今作が一番身近な設定に感じ、共感できる部分が多かったです。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー シーズン1 3話「人生の軌跡のすべて」
頭の中のチップ
チップを頭に埋め込むことで、記憶をデータとして記録しておくことが可能になった世界。弁護士のリアムは面接を終え、知人のホームパーティーに向かうため空港へ急いでいた。
乗ったタクシーでは高性能なチップのCMが流れており、空港では24時間、7週間と遡り、怪しい記憶がないかを確認される。そして知人の家に着くと、とうに忘れてしまった知人の妻の名前まで過去の記憶から確認できるのだ。
パーティーにはリアムの妻、フィオンも招待されていた。リアムがフィオンに声をかけると、一緒に話していたジョナスという男を紹介される。
食事が始まり、リアムの面接の話が話題に上げられた。仲間のひとりがリアムの面接をスクリーンに映して品評会をしようと提案するが、ジョナスが助け舟を出す。
話題はジョナスの恋愛観へと移る。最近婚約を解消したというジョナスは、なかなかの遊び人らしい範囲気だ。
かなりオープンな性格らしく、女性の前でも平気で「ベッドで美女が待ってる時に良かった時のS〇X再生して1人でしてる」なんて話までする始末。
ジョナスの下品な話に不快感を覚えるリアムだったが、妻のフィオンは彼のつまらないジョークになぜか大笑いしていた。
パーティーの顔ぶれの中には、チップを持たないハラムという女性がいた。彼女は事件に巻き込まれたことでチップを失くしてしまったが、チップがない方がいいと彼女は語るのだった。
元カレ
帰りの車の中、リアムはジョナスをよく思っていないことをフィオンに告げる。「じゃあなぜ家に誘ったの?」とフィオン。
リアムたちの乗る車の後ろにはジョナスの乗る車が。「君が誘いたがっていたからさ」とリアムは答えた。
家に着いた途端、自分から誘っておきながら、リアムはジョナスを「疲れているから」と追い返した。
フィオンとジョナスの親密そうな雰囲気がどうしても気になるリアム。フィオンを問いただすと、やはり昔ジョナスと関係があったという。
最初の話では1週間付き合っただけと言っていたフィオンだが、リアムが記憶を遡って証拠を見せると、1ヶ月関係が続いたことを認めた。
口論になり、リアムはフィオンのことをクソ女呼ばわりしてしまう。
その後仲直りとして体を重ねるが、お互いの目は虚ろ。お互いが1番良かった時の記憶を再生しながらコトに及んでいるからだ。
情事の後、ジョナスはひとり酒しながら妻とジョナスの様子を再生する。朝になり、子供のシッターがやってくると、リアムはシッターにまで映像を見せ、妻の態度がおかしかったことを認めさせようとした。
リアムは昨日、自分がパーティーにやって来た時の妻の様子を見せ、自分の姿を見た途端、フィオンの表情が沈んだと主張。リアムが再度ジョナスとの交際期間を問いただすと、半年続いたとフィオンは答えた。
ついにリアムは激怒。フィオンは「酔いを覚まして」と家を出て行った。
悲しき真実
リアムは飲酒状態にもかかわらず、車を運転しジョナスの家へ無理矢理乗り込む。ジョナスの家には昨日パーティーで会ったハラムがいた。
様子のおかしいリアムが酒を手にしたところをジョナスは止めようとし、2人は揉み合いに。ついにリアムはジョナスを殴ってしまう。
気付くと、リアムは自身の車の中で目を覚ました。泥酔状態にあったため途中から記憶を失ってしまったようだ。
記憶を再生し、何が起きたのか確認するリアム。リアムはジョナスに凶器をつきつけて脅し、ジョナスにフィオンとの記憶を削除させたのだ。
しかしリアムは一瞬見えたジョナスの記憶の中に、悲しい真実を見つけてしまう。
「ゴムは使った?」
自宅に戻り、まだ眠っていたフィオンにリアムが問う。状況がわかっていないフィオンに、リアムは自身の記憶を再生して見せた。
リアムとフィオンが寝ているベッドの上には絵が飾られていた。そしてリアムが再生したジョナスの記憶の中には、1年半前に同じ絵のある場所で微笑むフィオンの姿が。
つまり1年半前、ジョナスはこの寝室にいたということだ。
フィオンは事実を認め、喧嘩してリアムが家を出て行った間のことだと話した。
繰り返し避妊はしたかと追及するリアム。フィオンはつけたと主張するが、信じられるわけがない。
リアムはその時の記憶を見せるようフィオンに要求。フィオンは拒否するが、リアムに繰り返し怒鳴られ、泣き崩れながら記憶を再生する。
リアムは幸せだった頃の記憶を再生していた。この家にもう愛しい妻と子供の姿はない。
リアムがカミソリを手にし、フィオンの思い出が詰まったチップを自力で取り出すシーンで、この物語は終了する。
感想
この「人生の軌跡のすべて」という作品の肝は、なんといっても設定の面白さ。
頭にチップを埋め込み、今まで経験したことのすべてを簡単に再生することができる。今はインスタやらTwitterなんかがそれに値するわけだけど、それが更に発展した世界だ。
幸せな記憶だって何度も再生できるし、嫌な記憶は削除してしまえばいい。この作品のジョナスは脅しという不本意な理由であったけど、別れた恋人のことは記憶を削除してしまえばなかったことにもできるわけだ。
それってすごくいいかもしれない。例えば大切な誰かを亡くしてしまったとしても、いつでも思い出が鮮明に残るわけでしょ。
何か嫌なことがあったって、すぐに記憶を削除すれば簡単に気持ちを切り替えることができる。もう酒や薬に頼る必要がなくなる。
勉強する必要だってなくなる。本や映画なんかは、最初の1回だけ見ちゃえば何度だって繰り返し再生できる。
か、反面恐ろしい部分も多い。
悪いことが何にもできなくなる。犯罪が減るかもしれないけど、例えばちょっと仕事をサボったりだとか、そういう日常の中でのちょっとした”悪いこと”だって、見られてしまえば即刻クビなんてことも有り得る。
言ってしまった言葉の取り消しだってできない。主人公のリアムはついカッとなって言ってしまった「クソ女」を妻に繰り返し再生されていたけど、このように本心ではないことだって、口に出してしまえば証拠として一生残ってしまうわけだ。
そして、いつでも過去の記憶が再生できるから、過去に捕らわれ、現在を大切にできないというケースも有り得る。作中でもリアムとフィオンのSEX中、お互い違う記憶を再生していたんだもんなあ…。
そしてこのストーリーの通り、夫婦間のいざこざが絶えなそうだとも思う。浮気はもちろん最低な行為だけど、夫婦はあまり干渉しすぎない方が良いと昔からよく言うもの。
リアムのように元々嫉妬心の強い人が相手だと、四六時中記憶を再生されたり、再生させられたさせられるかもしれない。この作品の場合、結局のところ黒だったわけだから妻が悪いと私は思うけど、身に覚えがない場合はたまったもんじゃないよね。
人間の記憶って不完全で、どうでもいいことはもちろんだけど、一生忘れたくないことだって、記憶が薄れてしまうこともある。だけど不完全だからこそ、過去に捕われすぎず現在を大切に生きることができるんだなと、この作品を見て改めて実感しました。
そして面白いのがこの作品を見た直後、職場で「海外の大企業って体の中にマイクロチップ埋めてる会社もあるらしいね~」っていうウワサを聞いたこと。自分は全く知らなかったから「そうなの!?」って驚いたけど、直後「これやん!!」とこの作品を思い出しました。
調べたらどうやら本当のようで、チップが埋め込んである手をかざすと自販機が使えたり、コピー機なんかの会社の設備が使えたりするらしい。
このドラマのような世界がきてしまう日は、もしかしたらそう遠くないのかもしれないね。
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