~ざっくり登場人物紹介~
クレイ:ハンナのクラスメイトで元バイト仲間。ハンナに恋していた。
ハンナ:自殺した転校生。自殺に至った”13の理由”をテープに録音して残す。
トニー:クレイの親友。生前のハンナの良き相談相手。
オリヴィア:ハンナの母。ハンナがいじめにあっていたと確信し、学校に訴訟を起こす。
ジャスティン:運動部の人気者。5ヶ月間ホームレス生活をしており、現在はクレイの家に泊まる。
ジェシカ:美人のチアリーダー。ブライスのレイプ被害に苦しむ。
ブライス:金持ちの息子で運動部の人気者。ハンナ、ジェシカをレイプし苦しめた犯人。
以下、ネタバレ大いに含みますのでご注意ください。
13の理由 シーズン2 13話 「さよなら」
1ヶ月後
ブライスが連行されてから1ヶ月後。ジェシカとブライスの裁判に決着がつく。
ジェシカは涙ながらにレイプにあった時の心境を語りブライスへの厳罰を強く求めるも、裁判長の下した結果は“3ヶ月の保護観察処分”のみ。
さらにブライスは逮捕後数時間で保釈されたものの、ジャスティンは母親の行方がわからないことを理由に1ヶ月経った現在も拘留され続けていた。
ハンナとの別れ
教会でハンナの葬儀を行うことを決めたベイカー夫妻。葬儀でのスピーチを頼まれたクレイは、未だクレイの傍をついて回るハンナの幻覚と向き合い「1番恐れているのは、君を忘れること。でも次に怖いのは、君を忘れられないこと」と胸の内を明かす。
オリヴィアはハンナの葬儀で、ハンナはニューヨークでライターになることが夢だったと語り、葬儀に参列した人々に「ハンナの分まで夢を持って」と訴える。
クレイはスピーチでハンナとの思い出や、ハンナに恋していたことを語る。参列者の席に座り微笑むハンナの姿を見たクレイは、彼女の冥福を願い永遠の別れを告げる。
葬儀の後、参列者はハンナの行きつけだったカフェに集まり、みな穏やかな表情でハンナの思い出話に花を咲かせる。ようやく保釈されたジャスティンも姿を表す。
戻ってきたジャスティンにクレイは「両親と話しあったんだけど、うちの養子にならないか?」と提案。ジャスティンは「ぜひ養子にしてほしい」と涙ながらに答える。
オリヴィアはクレイとの別れ際、ハンナのPCに残っていたという“死なない理由リスト”を見せる。リストにはクレイの名前が記されていた。
暴行を受けるタイラー
1ヶ月間の更生プログラムを終え、リバティ高に戻ったタイラー。プログラムにより感情への対処ができるようになったタイラーは明るく友人たちに声をかけるが、マッケンジーには新しい彼氏ができ、サイラスとの溝は埋まらず、失ってしまった関係を修復できない。
タイラーが1人でトイレにいると、モンゴメリーと2人の仲間がやってきて彼を取り囲む。タイラーがグラウンドを焼いたことに怒り狂っていたモンゴメリーは、タイラーの頭を何度も叩きつけ顔をトイレの便器に突っ込み、箒の柄を使い残虐すぎる性的暴行をする。
それぞれのダンスパーティー
ダンスパーティーにやってくるクレイとジャスティン。ジェシカはアレックスと、トニーは恋人のケイレブと、みな思い思いに楽しい一時を過ごす。
クレイは椅子に沈みこんでいたジャスティンとザックを引っ張り上げ、ダンスで弾けまくる。ところが途中でハンナとの思い出の曲が流れ、クレイは悲痛な面持ちでダンスフロアへ向かっていく。
立ち尽くすクレイをハグするトニー。ジェシカ、アレックス、ザック、コートニー、ライアンもやってきて、クレイを中心に輪になり寄り添い合う。
アレックスとキスをするジェシカを見てショックを受け、1人きりでロッカールームに佇むジャスティン。そこへジェシカがやってきて、2人は傷ついた心を埋め合うようにように交わり合う。
タイラーから不審なメールを受け取ったとマッケンジーに知らされたクレイが外に出ると、会場の外に銃を手にしたタイラーの姿が。怒りに支配されたタイラーは理性を失っており、クレイに対しても銃を向ける。
遠くからサイレンの音が聞こえ、このままではタイラーが銃撃犯として射殺されてしまうと焦ったクレイは「死んで欲しくない」と必死に懇願し、タイラーの手から銃を奪う。
トニーの運転する車にタイラーを乗せ、銃を手にしたクレイだけがその場に残されるのだった。
その他の出来事
事務所を移籍するレイニー
ハンナの裁判で学校側の弁護を引き受けた事務所に所属していたクレイの母レイニー。ハンナの裁判により心境の変化があり、今後はオリヴィアの弁護をしていたデニスと共に、少女たちを助けるため働くと決める。
ジャスティンを監視するセス
カフェにいるジャスティンの姿を、離れた場所から監視するジャスティン母の恋人セス。
ドラッグをやめられないジャスティン
クレイが部屋を空けている間、こっそりと隠し持っていたドラッグを注射するジャスティン。
写真を燃やすニナ
缶の中の写真を燃やすニナ。クレイの車から缶を盗んだ犯人は彼女だった。
妊娠したクロエ
パーティー会場のトイレでジェシカに遭遇したクロエは「妊娠した」と相談する。
感想
ついにシーズン2も最終話を迎えました。
冒頭のジェシカの裁判ではブライスが実質罪を免れたにも等しい判決を言い渡され、世の中がいかに不公平かを実感させられました。ジェシカに続き女性キャラクターたちが性的被害を告白するシーンは、女性なら誰でもこのような被害にあったことがあるということを表したかったのでしょう。
そしてやってきてしまった、ハンナとの決別の時。
胸の内を明かしたクレイに対し、ハンナは「あのダンスパーティーではじけて踊った時のことを思い出して」と言うんだけど、まるで“楽しかった記憶をいつまでも忘れないで”と言っているようで切なかった。
きっと自分がこの世を去ったとしたら、同じことを思うのだろうなと。苦しんでいた時や喧嘩をしていた時より、楽しく笑っていた思い出をいつまでも覚えていてほしいはず。
クレイがスピーチで語った「離れていても愛することはできる」という言葉、そして教会の牧師がクレイに語った「私たちはハンナを失ったが、ハンナが残したものは消えない」という言葉は、大切な人を亡くした経験がある身として心が救われました。
私もその経験をしてからもう何年も経ち、当初より故人を思い出すことは少なくなりました。しかしその人が教えてくれた事やたくさんの思い出は、ずっと私という人間の一部であり続けています。
葬儀の後、ハンナのお気に入りのカフェでオリヴィアはライアンと旅の話をし、裁判で同性愛を打ち明けたコートニーは恋人ができたことをアンディに報告。みんな笑顔で楽しそうに話していて微笑ましかった。
クレイに「うちの養子にならないか?」と提案され、静かに涙するジャスティンにも目頭が熱くなりした。正反対の立場にいた2人がまさか兄弟になるなんて、見ていた当初は予想もつかない展開です。
ハンナが書いたという”生きている理由リスト”の項目は11個で、自殺した理由より2つ少なかった。しかも11個の項目の中には両親とクレイの名前が何度も登場していました。
もしも生きている理由が生きていたくない理由よりも多かったら、ハンナはまだ人生を諦めなかったのかと思うとやるせない気持ちになります。
そしてシーズン3の新たなテーマとなるタイラーの事件。彼もまたハンナのように様々な不幸が積み重なっていく様子がこれまで描かれてきましたが、最大のきっかけとなった性的虐待のシーンは何度見てもショッキングで心が抉られるよう。
初見の時、”メンバーの誰かが酷い性的虐待に合う”と事前情報が頭に入っていたので覚悟して見ましたが、予想をはるかに上回る残酷さに気分が悪くなったのを覚えています。同じように感じた人が多いらしく、この過激な描写にはかなり賛否両論あるようです。
このシーンがここまでショッキングなのは、タイラー役とモンゴメリー役の俳優の演技力が秀逸すぎることも要因の1つでしょう。シーズン1からずっと思っていましたが、特にタイラーという人物は作品という枠を通り越し、まるで1人の少年のリアルを見ているように錯覚してしまう。
実はタイラーはこの作品の中で個人的に1番好きなキャラクター。不公平な世界に対し内なる怒りを秘めているところ、何事にも不器用で上手くいかないところばかりな部分が自分と似ていて、つい感情移入してしまいます。
ラストではそんなタイラーがもう少しで銃撃事件を起こそうとするという大変な自体に。自分がジャスティンに助けられたように今度はクレイがタイラーを救いました。
タイラーはトニーの車で逃がしたものの、ゴツい銃を持ったまま置き去りになってしまったクレイはあの後どうなるのか?
散々な終わり方となってしまったものの、ダンスパーティーのシーンではみんな楽しそうだった。他人にも等しかった人間たちがハンナという1つの絆で結ばれ、寄り添うシーンは胸が熱くなりました。
その後のパーティーシーンではこの作品の製作総指揮を務めたセレーナ・ゴメスの“Back to You”も流れていました。この曲は普段からよく聴くお気に入り。
シーズン2を全て見終わった感想としては、ハンナの裁判絡みで疑問に思うシーンはところどころあったものの、総合的に面白かったしあってよかったと重いました。
シーズン1で終わっていた方がきれいだったかもしれないですが、“ふさわしい被害者などいない”‘という事実を体感させてくれたことがシーズン2の意義だと思っています。そしてブライスやモンティといった加害者が“生まれながらのモンスターではない”という事実も。
この作品を見てから現代の世の中の出来事に対しても見方が変わりました。
次回はシーズン3に突入。タイラーとクレイのその後、そしてまた家庭環境絡みで一波乱ありそうなジャスティンやクロエの妊娠などの問題がどう展開していくのか気になります。