ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
予告動画
キャスト
クリス・オダウド
ラシダ・ジョーンズ
ブラック・ミラー 7-1【普通の人々】
結婚記念日
マイクとアマンダは、毎年結婚記念日を思い出の地ジュニパーで過ごす仲の良い夫婦。アマンダは教師、マイクは作業員という生活。
幸せな日常は、アマンダが突然倒れることで一変する。診断は脳腫瘍。意識が戻る可能性は低く、絶望的な状況の中、マイクの元に新しい治療サービス「リヴァーマインド」の話が舞い込む。
リヴァーマインドという救い
リヴァーマインドとは、患者の脳神経をスキャンしてクローンを作成し、腫瘍を取り除いたうえで意識を回復させるという先進技術。ただし、月額300ドルという高額な利用料、電波エリア内にいること、長時間睡眠などの副作用がある。マイクは迷いながらも妻を救いたい一心で契約を決意。手術は成功し、アマンダは目覚める。
回復と異変
回復したアマンダと再び迎えたジュニパーでの記念日。しかし、アマンダは突如として意識を失い白目をむく。その場所が電波エリア外だったのだ。
新たな広域プランは高額すぎて手が出せない。やがてアマンダの様子に異変が…何気ない会話の中で、突如シリアルのCMを話し始める。学校でも生徒にナイキの靴を勧める広告のような言動が現れ、次第に生活に支障をきたす。
崩れゆく生活
CMを止めるには“プラスプラン”へのアップグレードが必要とのこと。しかしその価格も現実的ではない。ついにアマンダは教師の職を失う。
生活費が足りず、マイクは怪しげな配信サイトに手を出す。視聴者のコメント通りにネズミ捕りで舌を挟むなど、身体を張った過激配信で収益を得るマイク。その金でアマンダのプランをアップグレードする。
理想の生活の裏で
新しいプランでCMは止まり、自由に外出できるようになったアマンダ。しかし代償として1日12時間の強制睡眠が課せられ、心身が疲弊していく。更に上のVIPプランは、スマホで感覚を自在に操作できるというが、価格は桁違い。マイクが記念日のために奮発して買った試用版の“ブースター”で快感レベルを上げたアマンダは、何気ない音楽や食事に恍惚の表情を浮かべる。
最後の結婚記念日
マイクの配信行為は同僚たちにバレて、嘲笑と暴力沙汰の末、職を失う。収入も途絶え、担当者に頼み込むも取り付く島もない。
そして1年後、結婚記念日。マイクはボロボロになりながらアマンダにブースター30分をプレゼント。アマンダは穏やかな景色を味わい、「もう潮時よ」と語る。ブースターの効果が切れ、CMが再び流れ出す彼女に、マイクは枕を押し当てて……。
ラストは配信画面が開かれたままのパソコン。そしてマイクが手にしたのはカッターナイフだった。
感想
広告とテクノロジーの恐ろしい融合
今回、もっとも印象的だったのは“安いプラン=CM強制”という設定。これはNetflixやAmazonプライムなど、現実のサブスクシステムを強烈に風刺していると感じました。
実際、有料のアマプラに広告付きプランが導入されたばかりということもあり、余計にタイムリーに感じてしまいました。スタンダードプランで十分使えていたハズなのに、段々と不便にされアップグレードを要求されるこの感じ…。
しかも、会話中に突然「蜂蜜入りのシリアル」や「ナイキのシューズ」など、CMの挿入タイミングが絶妙なのがまた、現実にありそうな感じでゾワゾワします。
リアルな「過激配信」の恐さ
マイクがやっていたような「刺激的な配信で投げ銭を稼ぐ」という手法は、現代の配信文化にも通じていて、実際に日本や海外でもそれが原因で問題や事件に発展しているケースも珍しくありません。
視聴者を煽るような発言、炎上を狙った行動、命の危険すら伴うような無謀な挑戦。それを「数字が伸びるから」「収益になるから」と正当化してしまう怖さ――そして何より怖いのは、「応援」の名のもとに過激さをエンタメとして消費する視聴者と、そうした異常さに誰も驚かなくなっている世の中。
今作は、そんな現代の“視聴数至上主義”への警鐘にも感じられました。
現代社会の鏡としてのブラックミラー
“普通の人々”というタイトル通り、この物語に登場するのはどこにでもいるような夫婦。大きな野望もない、穏やかな幸せを守りたかっただけのふたりが、テクノロジーによって少しずつ蝕まれていくさまが描かれています。
SNSや広告、過激なコンテンツ、そしてそれらを消費する観客の存在――ブラックミラーは今シーズンも変わらず、現代社会の暗部を巧みにえぐってきたと感じました。
シーズン7は豊作揃いだったことや、今作の後味の悪さも要因なのか、意外にも他のエピソードより周囲の評価がイマイチな様子。しかし、個人的には初っ端からブラックミラーらしい作品が見られて嬉しかったですし、考えさせられる要素も多々ありで、観て良かった作品でした。
作中歌
アマンダがブースターを使った日にホテルのバーで演奏されている曲は、Minnie Ripertonの「Lovin’ You」。有名な曲なので、誰もが1度耳にしたことがあるのではないでしょうか。
また、ブラックミラーではおなじみ「エニワンッ」こと「Anyone Who Knows What Love Is」も健在でしたね。