ブラック・ミラー 3-4【サン・ジュニペロ】のネタバレと感想

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Black Mirror

1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今作は私的にブラックミラー史上1番好きな物語です。

以下、ネタバレになりますのでご注意ください。

   

時は1987年。ネオン輝く海辺の美しい街、サン・ジュニペロ。

内気な性格のヨーキーは、タッカーズという名のクラブで男性に追われる美しい女性を見かける。友人だと話を合わせ、彼女を助け出すヨーキー。

 
 
 
 
 
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彼女の名前はケリーといい、社交的でヨーキーとは正反対の魅力の持ち主。2人は惹かれ合い、ケリーはヨーキーを誘うが、婚約者のいるヨーキーはケリーの誘いにのれず夜は終わってしまう。

   

一週間後、ケリーへ会うためタッカーズへやってくるヨーキー。しかしケリーはヨーキーを尻目に別の男性とダンスを踊る。

ケリーが1人になった隙をつき、追いかけるヨーキー。意を決して「どうすれば勇気を出せるか教えて」とケリーに話しかける。

 
 
 
 
 
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そして2人はケリーの家で一夜を共にする

これが初体験だと告白するヨーキー。「いつ女性が好きだと気づいたの?」と問いかけるヨーキーに、ケリーは男性と結婚していた過去を告白する

女性が好きだと自覚しながらも、夫を1番に愛していたというケリー。「でも彼はここに留まることを選ばなかった。私もいずれいなくなる」と意味深な言葉を残し、幸せな夜は終わる。

   

一週間後、ヨーキーはケリーに会いにタッカーズへ向かうが、ケリーの姿はない。ケリーはクァグマイアという場所にいるかもしれないと人に聞き、ヨーキーはケリーを探しに向かう。

卑猥な雰囲気と暴力…タッカーズとは打って変わって治安の悪いクァグマイア。ここでヨーキーが見つけたのはケリーではなく、かつてケリーを追っていたあの男性だった。

ケリーに会いたきゃ別の時代を探せ」という彼の言葉通り、ヨーキーは80年代、90年代と一週間ごとに別の時代でケリーの姿を探す。そして2000年代でようやくケリーを見つけるが、ケリーは「あなたに何の借りもない」とヨーキーを冷たくあしらう。

その後、屋上でぽつんと佇むヨーキーにケリーが胸の内を明かし行く。楽しむためだけにここ、サン・ジュニペロにやってきたケリーは、自分が心からヨーキーを求めていることに気づき、戸惑っていたという。

   

海辺にあるケリーの家で、ヨーキーはついに来週、婚約者のグレッグと結婚すると話す。「家族は結婚を認めてない」「グレッグは私に同情して結婚してくれる」と切ない様子で話すヨーキー。

「あとどのくらいここにいられるかわからないってどういう意味?」と、以前ケリーが口にして気になっていたことを尋ねるヨーキー。ケリーは「癌が全身に転移していて、余命3ヶ月と宣告された」と答える。

「死んだ後もここに残るの?」とヨーキーが尋ねると、いいえと答えるケリー。ケリーの夫はここ、サン・ジュニペロに”脱出”できたのにも関わらず、2年前に亡くなってしまったとケリーは話す。

「私も試すべきか悩んだけど、試してみて良かった。あなたに会えたから」と言うヨーキーに、「外の世界でも出会えたかも」とケリーが返す。しかしヨーキーは「外の世界ではあなたと出会う機会は絶対にない」「外の世界で会ったら私を好きになってくれなかった」と悲しい台詞を吐く。

「本当の私を見たらぞっとする」と怯えるヨーキーを説得し、ケリーは外の世界のヨーキーに会いに行く約束をする

 
 
 
 
 
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時はテクノロジーの進化が進んだ現代。介護施設で暮らす老婦人のケリーは、介護士の手を借りてある病院へと向かう。

病室へ案内されると、喉にチューブを通され、目を開けたまま寝たきりの老いた女性の姿が。「会えてよかった」と声をかけ、優しくヨーキーの額にキスをするケリー

ケリーが病室を出ると、グレッグという名の太った看護師の男性が話しかけてくる。「彼女が脱出する前に会いに来てくれて良かった」というグレッグの言葉で、初めてヨーキーが”脱出”しようとしていることを知る。

ヨーキーは21歳の時両親に同性愛をカミングアウトしたが受け入れられず、ショックを受け車で飛び出したところを事故にあい、それからずっと寝たきりのままだとグレッグは話す。

アプリでヨーキーと意思の疎通を図り、ヨーキーが安楽死の後にサン・ジュニペロへの脱出を望んでいると知ったグレッグ。安楽死は家族が同意した場合にのみ実行されるがヨーキーの家族は同意せず、彼自身が結婚し夫となることで、ヨーキーを脱出させる計画だとグレッグは話した。

ヨーキーとグレッグは明日結婚し、その後”脱出”を実行するという

少しだけヨーキーに会いたいと頼み込むケリー。頭にチップをつけてボタンを押すと、砂浜に佇むいつものヨーキーの姿がある。

私と結婚して

ヨーキーの前に跪くケリー。ヨーキーは嬉しさのあまりケリーにキスをする。

 
 
 
 
 
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翌日、牧師とグレッグの立ち会いのもと、病室で老婦人2人の結婚式が行われる。ほどなくして喉元のチューブが抜かれ、ヨーキーは美しい楽園サン・ジュニペロの世界に永久脱出する

その夜、ケリーはいつものように”ビジター“としてサン・ジュニペロを訪れる。浜辺に佇むヨーキーの元へ行き、2人でウェディングドレスを着て車を走らせる。

 
 
 
 
 
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やっと住人になれたと喜ぶヨーキーは、時が来たらケリーにも”脱出”して欲しいと頼む。しかしケリーの気は変わらず、ここに永住する気はないと告げる。

ケリーは愛する娘に若くして先立たれた。夫のリチャードには”脱出”の選択肢もあったが、「娘は選べなかった」という理由で死を選んだ。

「何の意味もない世界にずっといたいの?」と言い放ち、ヨーキーの呼び止める声も聞かずケリーは1人で車を走らせる。

頭に血が昇ったケリーはスピードを出したまま障害物に突っ込み、体ごと外に投げ飛ばされる。しかしこの世界では”死”どころか怪我をすることも、痛みすらも感じない。

そこへヨーキーが現れ手を差し伸べるが、その手に触れる前に時間が2人を引き裂く。

だんだんと容態が悪化していく現実世界のケリー。介護施設での静かな時間、ケリーは考え、そしてある日介護士にあることを告げてケリーは亡くなる

   

青空の広がるサン・ジュニペロで、ある家の前に車を止めたヨーキー。そしてその家の影からはケリーの姿が

ドライブしながらはしゃぎ、キスをし、ダンスフロアで踊り…この美しい楽園で”永遠”を謳歌する2人のシーンでこの物語は終了する

   



2019年度は色々な映画、ドラマを見たけれど、中でも1番はダントツでこの作品です。今まで見てきたすべての作品含めて、こんなに美しい作品、他になかった。

1時間1分という短い時間の中で、こんなにも人を色々なことを考えさせ、感動させる作品を作ったチャーリー・ブルッカー氏は本当に凄い。

   

少しばかり考察というか、世界観の説明をするとサン・ジュニペロというのはものすごくリアルな仮想世界(クラウド)で、亡くなった後魂をクラウド上にアップロードすることでここに”永住”できるというシステムのようですね。

主に亡くなった人向けのサービスだけれど、ケリーのようなビジターもいるのは”お試し期間”的なやつでしょうか。試しもせずに死後その世界にずっといたい!なんて決められないもんね。

   

エンディングで、このサン・ジュニペロというシステムを扱っている会社が”タッカー社”だということが判明します。そう、2人が出会ったクラブの”タッカーズ”!

そう思って見てみると、そこにいる人たちの会話の節々にそういう要素があるんです。若い男の人なのに「膝痛めちゃって手術なんだ〜」みたいなね。だからあそこにいる人、見た目若いけど=現実世界の姿ではないってことだよね。

見た目に関しては、ケリーがグレッグと話した時に言った言葉から察するに「自分にとって1番いい時代が選べる」ということかな。そしてそれはヨーキーがケリーを探していろんな時代へ行っていたことから、現実世界からサン・ジュニペロへ訪れる時毎回設定できる感じっぽいですね。

設定できるのは「痛みの感度」も。作中ケリーが拳で鏡を割るシーンがあるんだけど、痛みもなければ血も出ない。後に、ケリーがヨーキーに「痛みの感度は0にしてるんだよね?」と言うシーンもある。

この死後の世界には「死」という概念はないらしい。

   

この「サン・ジュニペロ」の主題歌は、誰もが一度は聞いたことがあるであろう名曲「heaven is a place on earth」。「天国はこの地上にある」と歌った曲で、正にこのサン・ジュニペロの世界そのものです。

ラスト3分くらいで、ヨーキーがケリーを迎えに行くシーンにエンドクレジットを挟みながらこの曲が流れるんだけど、サン・ジュニペロの海と青空の美しさとこの曲がすごくマッチしていて、さらに亡くなったと思ったケリーが物陰から現れるもんだから、画面が見えないほど涙が流れる流れる。何度見てもこのシーンは感動する。

   

最初、この物語は同性愛がメインテーマなのかと思って見ていたけど、そうじゃなかった。途中から2人が同性であることなんてすっかり気にも止めなくなっていて、この世界観にただただ夢中になり、息するのも忘れそうになるほど、どうにか2人に幸せになってほしいと願う自分がいた。

21歳という若さで全身付随になったヨーキーが、サン・ジュニペロを楽園だと思う気持ちは痛いほどよく理解できる。だってこの世界では体が動くし、1番良かった頃の容姿で、叶わなかった同性との恋だってできる。

一方で、愛する娘に先立たれ、娘は選べなかったからという理由でサン・ジュニペロへの脱出を選ばなかったケリーの旦那さんと、自分も選べないというケリーの思いもわかる。娘を1人で死なせ、自分たちだけここで永遠を生きることなんてできないでしょう。

だからこそ、ケリーの決心は相当のものだということだよね。今まで何十年と連れ添ってきた家族でなく、ヨーキーを選んだ。でもこれは今までの家族を捨てたというわけではなく、「自分の未来を自分で選んだ」ということだと私は感じた。

今までの家族と長く一緒にいたのは事実、でもここでヨーキーと出会ったことも事実だから。

   

私はどうするだろう…と考えてみる。すごく難しいけれど、もしも愛する人と一緒にいられるならサン・ジュニペロへ行きたい。でも愛する人のいないサン・ジュニペロは、ケリーの言う通り「なんの意味もない世界」かもしれない。

日々科学は進歩しているといえど、さすがにサン・ジュニペロみたいな”死後の世界のクラウド”なんていうのは今のところこの世に存在しない。もし存在したとしても、恐怖や嫌悪感を抱く人もきっと多いでしょう。

それでももし大切な人と永遠を過ごせる死後の世界があるなら、私はそこへ行行きたいと願わずにはいられない。