1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今作は「アニメキャラクター」と「政治」がテーマのストーリーです。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 2-3【時のクマ、ウォルドー】
ウォルドー
とある番組内のアニメキャラクター「ウォルドー」の中の人を演じているジェイミー。青い熊のキャラクターなウォルドーは、人をこき下ろす暴言と下ネタを連発することが特徴の、何とも自由すぎるキャラクターだ。
内向的な性格のジェイミーは、自分とは正反対のウォルドーを演じ続けることに不安を抱き続けていた。
そんなある日、番組では不祥事を起こして辞職した議員のニュースを扱うことになる。ウォルドーにも政治のニュースに触れろと指示が出るが、「自分に政治の話は無理だ」と気乗りしないジェイミー。
ウォルドーのコーナーが始まり、番組ではリアム・モンローという保守党の議員をゲストに迎え、ウォルドーと対談している様子が映される。
真面目に政治の話をするモンロー議員を、ウォルドーはいつものように馬鹿にした態度でこき下ろす。
番組が放送された後、ジェイミーは自社の社長に呼ばれ、モンロー議員が番組に対し苦情を入れたと言われる。咎められるかと思ったジェイミーだが、「話題になる」「ウォルドーの攻撃は見事だった」と賞賛されるのであった。
翌日、社内のミーティングに参加するジェイミー。辞職した議員の補欠選挙に、モンロー議員が出馬することが話題となる。
社長が発した「ウォルドーを送り込め」という冗談めいた発言に他のメンバーも次々同意し、当選目当てではなく注目を集めることを目的として、ウォルドーの選挙への出馬が決定してしまう。
ウォルドーの選挙活動は早速始まる。街で市民との交流を深めるモンロー議員にウォルドーを映したトラックが近づき、大声で彼を小馬鹿にする発言を繰り返して、街宣活動の邪魔をする。
モンローが場所を変えてもウォルドーのトラックは付きまとう。無視し続けるモンローだったが、ウォルドーが街の人を通してモンローに話しかけることにより、ウォルドーに反応せざるを得なくなる。
真摯にウォルドーと向き合うモンロー。しかしウォルドーの下品なパフォーマンスに市民は大ウケし、モンローの街宣活動はウォルドーによって壊されることとなる。
暴発
ある晩、ジェイミーは1人の女性と出会う。彼女はハリスといい、モンローとは別の党、労働党の候補者だ。
酒を飲みながら本音トークを繰り広げた2人は、一夜を共にする。ジェイミーは久々に感じる幸せに心を踊らせた。
しかしハリスが付添人にジェイミーの話をすると「今はモンローを攻撃しているが、次は君だ。二度と会うな」と、選挙活動中にジェイミーと会うことを禁じられる。
付添人の言いつけを守ることに決めたハリスは、ジェイミーに話しかけられるも「選挙活動中は会えない」と彼を冷たくあしらうのだった。
翌日、学生の討論番組に出演するジェイミー。番組内にはモンロー議員と、ハリスの姿もあった。
いつものようにハリスを罵倒するウォルドーだったが、なんと番組内でモンローにジェイミーの本名や年齢、職歴を暴露されてしまう。
黙りこくってしまうウォルドー。しかし次の瞬間、爆発したようにモンローへの批判、そして政治家そのものへの批判を口にする。
ウォルドーの攻撃はその場にいたハリスをも巻き込む。ウォルドーはハリスが選挙に勝つためではなく、自身のキャリアのために負けを承知で出馬したことを暴露してしまう。
「政治家って何だ?俺より嘘っぽいな!」
政治家を痛烈に批判し、最後は中指を立てて消えたウォルドー。その場にいた観客達からは拍手喝采が送られた。
人気者
その日を境にウォルドーは益々人気者になり、その番組がYouTubeに上げられると再生数は100万回を超えた。更に選挙の調査結果でもウォルドーはなんと3位にまで勝ち上がってしまった。
勝利への兆しが見えてきたことで、社長はウォルドーを本気で政界へ介入させようとし始める。「俺は政治家になりたくない」「政治に興味がない」「質問に答えられないと馬鹿に見える」と不満をぶちまけるジェイミー。
一度は強い意志で仕事を断るのだが、「ウォルドーができるのは自分しかいない」という責任感に苛まれ、結局言いなりになってしまう。
そんなジェイミーの元に、CIAの人間が訪れる。CIAはジェイミーに、ウォルドーを「政治エンターテインメント」と称し、世界に進出しようと持ちかけるのだった。
ウォルドーのせいで指示は低迷し、もはや負け確定となってしまったハリスの元へ、ジェイミーがやってくる。ジェイミーはあの日のことを謝ろうとするが、ハリスに「あなた何なの。何様よ」「あなたには意思も勇気もない」と強く批難される。
政治エンターテインメント
翌日、ジェイミーはいつものように街宣活動をすべく、トラックに乗った。しかしジェイミーが発した言葉は「俺に投票するな」。
「モンローかハリスに投票しろ」「俺に投票する奴は馬鹿だ」
狂ったように投票するな!と連呼するジェイミー。そこにハリスの付添人の男が偶然通りかかり、ウォルドーのトラックに食べ物を投げつけた。
「責めるな、彼は正しい」と最後にウォルドーとして発したジェイミーは突然席を立ち、「辞める」と一言告げてトラックを降りた。
「俺がウォルドーだ」と外へ出て民衆に語りかけるジェイミーだが、人々は聞く耳を持たない。
「そいつはレズビアンだ。そいつの声は聞くな」
自分は降りたにもかかわらず、再びウォルドーが声を発したことに唖然とするジェイミー。中では社長のジャックがジェイミーを真似てウォルドーを演じていたのだ。民衆たちが気付かぬ程、ジャックの声はジェイミーのウォルドーそっくりだった。
怒り狂ったジェイミーは近くにあった看板でトラックを叩き始めるが、「最初にそいつを殴ったやつに500ポンドやるぞ!」とウォルドーが発したのを皮切りに、ジェイミーは民衆にボコボコに殴られてしまうのだった。
選挙の当選結果を、ジェイミーは病院のベッドの上で見ていた。当選したのはモンローだったが、ウォルドーはなんと2位にまで上り詰めていた。
モンローが言葉を発すると周囲からブーイングが聞こえ、モニターの中のウォルドーが「靴を投げたやつみんなに500ポンドだ!」と言うと、人々はこぞってモンローに靴を投げた。
その後、唯一の職を失いホームレスとなったジェイミー。街の大きなモニターには「信じる」「希望」「変える」「未来」という言葉と共に、世界進出したウォルドーの姿が映り、ジェイミーがモニターの中のウォルドーへ向けて瓶を投げつけるシーンで、物語は終了する。
感想
番組の枠内のキャラクターってことは、ウォルドーは今の日本でいう「チコちゃん」みたいなもんでしょうか。まあチコちゃんはこんなに下ネタや過激な暴言吐くキャラクターではないと思うけど(実は一度も見たことない)。
本作はそんな番組の中のアニメキャラクターが、半ば制作側の悪ノリで選挙に出馬し、そしてまさかの民衆に受けてしまうというストーリーでした。
私はジェイミータイプであまり政治には詳しくないですが、ウォルドーの過激な発言、他の候補者を攻撃して自分を上げていくスタンスを見て、米の現大統領ドナルド・トランプ氏が脳裏に浮かびました。
が、ウォルドーは人間と違ってアニメだし、人をけなしたり暴言を吐く以外のことを何もしていない。実際政治的なことなど何一つ言っていないのに、人々はウォルドーを2位に仕立てあげたわけです。
ゆるキャラ人気投票みたいな感覚だったのかな。
要は今の人々が、政治に対して興味関心がないことの風刺でしょうね。
人々もただ単に興味がないってわけではなく、日本もそうだけどもうずっと政治なんて壊れていて、到底興味が持てるような状況じゃないというのもあると思うけど。同じような人たちが揃って同じようなつまんないこと言ってる中、暴言も下ネタも言いたいことを好きなように言いまくるウォルドーに、人々はある種の希望を見出したのかもしれません。
最後、政治の中身もわからないテレビ極端に運営されるウォルドーは、なんと世界にまで進出している。残すところあと1話でシーズン2も終わりのブラックミラーだけど、これまでの中である意味私たちにとって一番身近で恐ろしいラストって、この作品なのかもしれないね。