1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。逃げて逃げて逃げまくる今作は、ブラックミラーらしい衝撃のラストが待ち受けています。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 2-2【シロクマ】
記憶喪失
見知らぬ場所で目を覚ましたビクトリア。両手首には包帯が巻かれており、床には大量の散らばった薬が。記憶はなく、自分の名前すらも思い出せない。
ただ、目の前に置かれたモニターには、謎のマークが映し出されていた。
階段を降りていくと、恋人か、旦那と思わしき男性と一緒に映る自分の写真と、小さな女の子の写真を発見する。
外に出たビクトリアは周辺にいる人々に大声で助けを求めるが、皆ビクトリアの呼びかけに微動だにせず、ただ彼女へスマホを向けているだけ。
すると突然ビクトリアの近くに車が停まり、銃を手にした覆面の男がビクトリアに襲いかかってくる。
わけもわからず「助けて!」と叫びながら逃げ惑うビクトリアだったが、人々はただビクトリアにスマホを向けている。中には薄ら笑み浮かべる者さえいた。
“見物人”と”ハンター”
ガソリンスタンドにたどり着いたビクトリアは、たまたま外にいた迷彩服を着た男女に助けを求める。2人はビクトリアの姿を見るなり逃げようとするが、ビクトリアは無理やり2人と一緒に店の中に入り込み、立てこもる。
動揺する3人だったが、それでも男女2人は冷静に作戦を立てた。ついに銃を手にした男が店に侵入してくると、男性が囮になって襲いかかり、その隙に女性とビクトリアは裏口から脱出する。
店の中からは銃声が聞こえた。
銃で撃たれた男性がよろけながら外へ出てくると、ギャラリーたちも一緒に移動し、仰向けに倒れた男性の姿を撮影していた。
銃を手にした男の姿を見ていたビクトリアの脳裏に、写真に映っていた旦那と子供らしい2人の記憶が流れる。
物陰に隠れていたビクトリア達だったが、今度は不気味な仮面を被って武器を手にした2人組が現れる。
近くにあった空き家の中に逃げ込んだビクトリアと女性。ビクトリアが窓から外の様子を見ようとすると、女性が「見物人に撮られると数分で奴らがやってくる」とビクトリアを止める。
突然画面上に現れた謎のシグナル(ビクトリアが目を覚ました時にモニターに映されていたマーク)により、それを見た人々が”見物人“になったと女性は語る。彼らはどんな時でもただ”見ているだけ”だという。
見物人の他にも、武器を持って追いかけてきた”ハンター“と呼ばれる人物たちもおり、彼らは何をやっても捕まらないのをいいことに、どんどん過激化を増す一方なのだと女性は話した。
「これからどうするの」と女性に問うビクトリア。女性は”ホワイトベア“と呼ばれる電波の送信所に行き、破壊してシグナルを止めると言う。
“ホワイトベア”という名前を聞き、また何かを思い出しかけるビクトリア。
そこへ見物人が現れ、隠れていたビクトリア達の姿が撮影されてしまう。怒ったビクトリアは見物人に襲いかかり、撮影されたスマホを奪うことに成功する。
しかし中身を見ようとしたところで、「危険だから見ちゃダメ」とスタンガンを片手に女性に脅される。
見覚えのある男
先程撮られてしまったことが原因か、またもやハンターに見つかり、追われる2人。そこへ女性の仲間と思わしき中年の男性がやってきて、2人を車に乗せ救出する。
ビクトリアはその男性の顔を知っていたが、誰かは思い出せなかった。
更にビクトリアは「この後森へ行くんでしょ。森には追っ手がいないから」と、まるでこの状況を過去に体験したかのようなことを口走る。
車を停めて身の上話をしている最中、突然男性が2人に銃をつきつける。目隠しをされ、木に括られた人の遺体がたくさんある処刑場のような場所に連れていかれる2人。
身動きがとれないビクトリアをよそに、女性は隙を見て逃げ出す。
笑いながらドリルを近づけてくる男。その時、逃げたはずの女性が男に銃を放った。
女性の背を追いかけるビクトリアが振り返ると、動かなくなった男の周りには、例の如く見物人が集まって撮影をしていた。
ホワイトベア
車に乗り、再びホワイトベアに向かう2人。するとまた、ビクトリアの頭に走馬灯がよぎる。
「ジェマイマ、くまさんみたいに寝転がって。これはゲームよ」という言葉と共に、あの少女とシロクマのぬいぐるみが映る。次の瞬間手首を固定され、装置にかけられ悲鳴をあげる自分の姿を見た。
「ホワイトベアに行っちゃいけない気がする。戻って」と懇願するビクトリア。が、時既に遅し、2人はホワイトベアに到着してしまう。
女性が送信所の扉を開けている間、ビクトリアは旦那らしき人物と一緒に、炎を見る自分の姿の幻想を見る。
2人が送信所を燃やすべくガソリンをまいていると、あの仮面のハンターたちが現れる。女性はドリルを持ったハンターの標的になり、襲われてしまう。
その隙に別のハンターから銃を奪い取ることに成功したビクトリア。咄嗟に男に向けて銃を放ってしまうが…
銃の中からは出てきたのは、銃弾ではなく紙吹雪。すると突如発信所の壁が扉のように開き、眩しい光の中、手を叩いて喜ぶ観客の前に晒される。
わけがわからず固まるビクトリアを、ハンターたちは手錠つきの椅子に固定し、まるで舞台役者の如く、観客たちの前で何度もお辞儀をする。共に戦ってきたあの女性の姿も、ハンターたちと同じように振舞っていた。
司会者のように現れたのは、あの時森で殺したはずの中年男性。「君が何者か教えよう」と彼は語り出す。
真相
モニターに映し出されたのは、ビクトリアの旦那と思わしき男性の顔。彼の名前はイアンといい、旦那ではなく元婚約者だった。
そして、幾度となくビクトリアの脳裏に現れた笑顔の少女は、2人のどちらの子供でもない。シロクマのぬいぐるみがお気に入りだった少女は、2人の近所に住む子供だった。
ビクトリアとイアンは6歳のジェマイマを誘拐し、無惨にも森で焼き殺した。2人の逮捕の決め手となったのは、ビクトリアのスマホからイアンが少女を焼き殺す様子を映した動画が見つかったからであった。
シグナルと呼ばれたあのマークは、イアンが入れていたタトゥーと同じ絵柄だった。イアンは既に獄中で首を吊って死んだという。
真相を知り泣き崩れるビクトリアに、「人殺し」「くたばれ」と罵声を浴びせる観客達。「少女が苦しむのを、お前は黙って見ているだけだった。どんな気分だ?」と司会者が責め立てる。
「元の場所へ戻せ」と司会者が指示し、車で移動させられるビクトリア。移動中も観客達に暴言を浴びせられ、物を投げられ、ひたすらに撮影される。
連れてこられた先は、始めに目を覚ました部屋だった。自らが殺害した少女の映像を見せられながら、ビクトリアは頭に電流を流され、悲鳴を上げ続けた。
“ホワイトベア ジャスティス・パーク“というこの施設の一角では、今日も子供を含むゲスト達がこのショーのルールの説明を受けている。ルールの説明を行っているのは、あの時の司会者やビクトリアと共に戦った女性、ハンター達だ。
ルールは「話をしないこと」「一定の距離を保つこと」「思いきり楽しむこと」の3つ。
ルールの説明が終わり、観客達は皆笑顔でスマホを手にし、この参加型のアトラクションを楽しむ。
そして再び目を覚ましたビクトリアに同じことが繰り返され、物語は終わりを迎える。
感想
「犯人も同じ痛みを味わえばいい」
誰しも一度は思ったことがあるでしょう。テレビをつければ連日非道なニュースばかりのご時世だからね。
それを実現させたのがこの「シロクマ」という物語。この少女が他人の子とは思わなかったけど、「主人公がこの子供に何か悪いことやった罰なんやろうな」くらいは想像ついたよね。。
“ハンター”というのは実際手を下したイアンで、”見物人”はただ撮影して見ているだけだったビクトリアを表していたのね。日本でいうところの、正に”目には目を”ってスタイルの罰し方です。
この作品の恐ろしい部分は、それがエンターテイメントになっているところ。最後、あのホワイトベアというテーマパークのような場所に訪れている人たちはみんな笑顔で、中には小さな子供の姿もあった。
あの役者のような人たちが説明した3つのルール、まるで動物園みたいじゃないか。相手は極悪犯だけど、みんな当たり前の如く笑顔で人を追い詰める姿は恐ろしすぎる。
怖い、残酷と思うべきなのかもしれないけど、この”目には目を”の罰し方自体は正直「ありかな」と私は思ってしまいました。世の中「死刑」だけでは済まされない罪もあると思う。むしろ死ねばいいってもんじゃない。
が、この作品で描かれた皮肉もわからなくはない。事件と何の関わりもない人間が、面白半分の軽い感覚で犯人を痛めつけようとする姿は、決して見ていて気持ちのいいものではない。
犯罪者に対する罰って、結局何が正しいんでしょうか。