ネタバレを含みますので未視聴の方はご注意ください。
作品情報
予告動画
キャスト
イッサ・レイ
エマ・コリン
よみがえる名作
かつて名作を数多く手がけた「キーワース・ピクチャーズ」は、今や完全に落ちぶれた映画制作会社。そこに、キミーという女性が現れ、ある技術「リドリーム」を売り込みにやってくる。かつての名作をそのまま“中から再現できる”仮想現実技術――それは俳優の意識をデジタル空間に送り込むという、あまりに大胆なものだった。
この技術でリメイクされるのは、白黒映画の名作『ホテル・レヴェリー』。主演は男性だったが、長年脇役続きだった女優ブランディはどうしても主役を演じたくなり、映画会社に掛け合った末、見事主役の座を勝ち取る。
リドリーム
撮影初日、ブランディは白黒の世界の中へ。『ホテル・レヴェリー』の世界に“主演”として取り込まれた彼女は、まるでゲームのように物語を進行させる。好感度システムにより、ヒロインのクララとの関係を良好に保たなければ、物語は崩壊してしまう。
最初は順調だったが、クララの機嫌を損ねたことでストーリーが脱線。ブランディは混乱しながらも、クララを“ドロシー”と呼び、本名で語りかけると彼女はふと我に返る。ここから、クララ=ドロシーの“現実”が少しずつ崩れていく。
惹かれ合う2人
次第に仮想映画の枠を超え、クララ(ドロシー)は自分が映画の中の存在だと気づいていく。現実の彼女は、実はある女性を愛し、孤独の末に命を絶ったのだった。
一方、映画の外の世界では撮影機材が水濡れで停止。現実に戻れないまま、ブランディとドロシーは仮想世界で長い時を過ごし、いつしか互いに惹かれていく。
やがて機材は復旧し、ブランディは再び「役」として演技を始めなければならない。ドロシーは愛し合った記憶をさっぱり失い、まるで最初から何もなかったかのように振る舞う。
愛の果てに
ブランディは現実に戻ることよりも、仮想世界でクララと生きることを望み始める。ストーリーの中ではクララの夫が彼女を殺そうとしていることを知り、警告。クララは最初こそ信じないが、屋上で襲われそうになった際、ブランディが駆けつけ、命を救う。
その後のシーンでは、クララが夫を撃ち殺し、さらに警察をも撃って自らも撃たれるという、原作とはまるで違うラストへ。最後にブランディがセリフを口にした瞬間、現実世界へ戻る。
撮影後、リメイク版は感動作として世に送り出されたが、ブランディはひとり孤独な日々を送っていた。
そんなある日、彼女の元にUSBと電話機が届く。中の映像を再生し、試しに電話をかけると――画面の中のドロシーと繋がるのだった。
感想
複雑だがユニークな設定
本作の面白さは何といっても、映画の中に俳優自身が入り込み、仮想世界で物語を演じるというユニークな設定。”好感度を上げながら進めていく””好感度が下がると話が脱線する”とかはちょっと複雑ではありましたが、「映画の中に入り込んで演じる」という設定そのものは、映画好きとしてはワクワクするものでした。
白黒映画の世界が魅力的
舞台となるのが白黒映画の世界というのも、どこかノスタルジックで魅力的。またクララを演じたエマ・コリンの品のある美しさと、どこか影を感じさせる繊細な演技が見事にマッチしていて、この世界観にぴったりでした。
ドロシーが自死した理由
ドロシーが自死した理由についてはっきりと語られてはいませんでしたが、走馬灯のようなシーンで、ドロシーが実は同性愛者であったことがわかります。ドロシーが見ていた新聞に、 「主演俳優との恋」という見出しで彼女自身のことが書かれていたため、自死の理由は「同性愛者であることを公にできない孤独(またはそれが理由で恋人と破局)」だったのではないかな、と思いました。
ラストが切ない
ラスト、クララは「役」として書き換えられ、愛していたブランディのことを忘れてしまいます。それなのに、”ブランディを庇って自分が死ぬ”という映画の本筋から逸れに逸れた突拍子もない行動に出たり、最後の電話のシーンでは、また記憶がさっぱり抜けているはずなのに、ブランディに対して「ずっとあなたの声を聞いていたい」と言うんですよね。
クララはAIで、設定ひとつでパッと記憶を失ってしまうのに、それでもブランディへの感情や温もりはどこかに残る――「何度忘れてもやっぱり好きになる」という設定が、物悲しいけどロマンチックでした。