1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今回は心配性の母親と愛娘の親子の物語です。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 4-2【アークエンジェル】
アークエンジェル
シングルマザーとして愛娘のサラを育てるマリー。ある日、少し目を離した隙にサラが行方不明になりかけるという事件が起き、マリーはサラの頭に「アークエンジェル」という名の監視システムを埋め込む。
アークエンジェルの機能は、タブレットでサラの位置情報や健康状態を確認できるというもの。さらに、サラの視界をモニターに写したり、サラに見て欲しくないものにモザイクをかけて視界を制限することもできる。
やがてサラは成長し、学校へ入学する。同級生が暴力的なものに興味を持ち始める中、「血液」すらも見たことがないサラ。
どうにかして「血」を見ようと血溜まりの絵を描くが絵にすらもモザイクがかかり、サラは尖った鉛筆を何度も指先に突き刺す。
サラが自傷行為に走ってしまったことをきっかけに、サラのフィルターを外し、タブレットを物置へしまい込むマリー。
母と娘
それからのサラは普通の子供たちと同じように成長し、高校生に。
ある日サラはマリーに友達の家に行くと嘘をつき、彼氏とデートへ出かける。夜遅くなっても帰らないサラを心配するあまり、マリーがタブレットを取り出しサラの視界を覗き見ると…卑猥な言葉を吐くサラと裸の少年の姿が。
帰宅したサラにマリーはいつも通り接するが、それからマリーはサラの監視がやめられなくなる。更には同じ少年とサラがドラッグをやっている姿を見てしまい、マリーは少年の名前とバイト先を特定し、「娘に近づくな」と警告をしに行くのだった。
少年はマリーの忠告通りサラと別れ、サラは酷く同様する。しかしその足で、サラはドラッグストアへ向かい妊娠検査薬を手にするのだった…。
その様子をモニター越しに見ていたマリーは、こっそりとサラの飲み物に薬を混ぜる。サラは授業中に吐き気がしてトイレへ駆け込み、保健医から原因は緊急避妊薬だと聞かされる。
家に帰ったサラはゴミ箱の中から避妊薬の外箱を発見。まさかと思いマリーのタブレットを確認すると、自分が彼氏と過ごしていた時の映像や、彼に別れを告げられた時の映像が。
一連の出来事はすべてマリーによる仕業だったことが判明し、サラは急いで荷物をまとめる。
帰宅したマリーにサラは全てを知ったことを告げ、タブレットでマリーの体を何度も殴る。血塗れの母親を残し、家を出て行くサラ。
目覚めたマリーがサラの居場所を確認しようとするも、タブレットは故障。道路の真ん中で、血塗れのまま愛しい娘の名前を叫び続けるシーンで、物語は終了する。
感想
シングルマザーの母親が一人娘を愛するあまり、結果的に娘を失ってしまうという切なすぎるエピソードの今作。
自分は母子家庭で育ったので、このストーリーはかなり考えさせられるものがありました。自分は立場的にはサラの方だけど、気持ちの面ではかなりマリーに共感していました。
冒頭ではマリーの父親(サラのおじいちゃん)も同居してたはずですが、作中で倒れて以降は母子で2人暮らしをしてるようでした。マリーのサラに対する病的なまでの心配は、サラが一人娘だからというのと同時に、マリーにとっての家族はサラしかいないからっていうのもあったのかなと。これでおじいちゃんの目があったら、マリーもここまで大胆な監視をしなかったんじゃないかなぁとか冷静に考えてしまいました。
マリーの心配はわかるよ。お腹を痛めて産んだ一人娘が心配でないわけがない。
でも”親しき仲にも礼儀あり”という言葉もあるように、いくら親子であっても、親子だからこそ”超えてはいけない壁“がある。
サラが彼氏とよろしくやってるのをマリーがタブレット越しに見てしまうシーン、マリーもそりゃあショックで叫び出したくなるでしょうが、その瞬間を母親が盗み見ていたと知ってしまった時のサラの心情といったら、、、。ショックに恥ずかしさに、色んな感情があったと思うけど、最終的に”怒り”が勝るの、わかる。
それから今作もう一つの重要な要素、”制限“。サラの目には暴力から始まりポルノや血液、近所のめっちゃ吠える犬まで、要するに子供に見せなくないものがすべてモザイクがかかっているんです。
制限は視覚だけでなく、聴覚にも。ピー音じゃないけど、そういう不適切なワードの部分が聞き取れなくなり、喋っている口にもモザイクがかかります。
サラはカウンセリングで殴り合う人の絵を見てもそれが”殴り合い”とわからず「ただ話をしている人の絵」と認識したり、挙句血液見たさに自分の手を鉛筆でぶっ刺して血塗れにしたりします。
要するに「人はダメと言われたらやりたくなる」ものだということ。見せてもらえないものは見たい。「見せなくないから見せない」という行為は全くの逆効果だってことだよね。
ラスト、サラは結局マリーの元を去って終わりますが、血塗れのまま娘の名前を叫ぶ母の姿は辛い。元々の感情は、ただ「大事な娘を守りたかった」って単純なものなんだよね。
ちなみにこの作品の監督は、「羊たちの沈黙」でおなじみのジョディ・フォスター。
女性ならではの目線という感じで面白かったし、メッセージ性も強く色々と考えさせられるお話でした。