1話完結のSFオムニバス作品「ブラックミラー」。今回は少々サスペンスちっくな内容です。
以下、ネタバレになりますのでご注意ください。
ブラック・ミラー 3-6【殺意の追跡】
殺人ロボット
多くの人々から反感を買っていた女性ジャーナリストが惨殺され、捜査官のパークとブルーは事件の捜査を担当する。
その場に居合わせ重症を負った彼女の夫に事情聴取をすると、彼女は突如自分で自分の頭を抉り、自分自身の喉を掻っ切って自殺したと泣きながら話す。事件の直前、彼女は見知らぬ相手から送られてきた、誹謗中傷のメッセージが書かれたケーキを食べていたという。
ケーキに毒物が仕込まれていた可能性もあると考え、2人はケーキの送り主を調査する。送り主はある保育所勤務の女性で、ネット上で彼女に怒りを向ける人たちから寄付を募り、遊び半分でやっただけだという。
ケーキの中に毒物は入っていなかったが、その女性はSNS上で「#死ね」というハッシュタグと共に被害者の名前と写真を投稿していたことがわかった。ハッシュタグについて捜査すると、今はテレビ番組で人々のヒンシュクを買った、男性ラッパーの名前が多く挙がっていることに気づく。
それから間もなくして、同じ症状で男性は死亡。ここで2人の被害者の共通点として、2人とも頭部に“ADI”と呼ばれる人工の蜂型ロボットが入っていたという情報がわかる。
ADIの制作会社”グラニュラー”に聴取に訪れるパークとブルー。通常は人の手で操作されることはないというADIだが、何者かに乗っ取られた形跡があり、意図的な殺人とみて間違いないようだった。
成り行きゲーム
捜査官のリーも加わり、再度ハッシュタグについて調べると、元となる投稿にある動画が添付されているのを発見。内容は”成り行きゲーム“というゲームの説明で、最も多く「#死ね」と投稿された人間が特定の時間に殺されるという悪趣味なものだった。
投票の結果を見ると、2人の被害者はそれぞれ1位に選ばれており、このゲームがただの冗談ではないことが証明される。そして現時点では別の女性が1位になっており、パークら捜査官たちは急いで彼女の身柄の確保に向かう。
女性の身柄は無事隔離施設へと保護されるが、ADI会社の担当者から、施設の近くで突如数千匹のADIが姿を消したと報告が入る。
程なくして隔離施設の外では無数のADIが渦巻き、隙間から部屋の中にまで侵入され、パークとブルーは女性を連れてバスルームに立て込む。
しかし換気扇からバスルームへ侵入され、捜査官2人は女性を守るが女性の鼻からADIが侵入し、目の前で女性は息絶えてしまうのだった。
真相
事件の後、ブルーがADIの本当の目的は環境を守るためでなく、政府による”国民の監視”だったという本質に気づく。パークが”グラニュラー”に過去勤めていた人間を洗い出すと、”ギャレット・スコールズ“という男の名が浮上する。
そしてADIの解析を担当していた捜査官から、ギャレットが書いたと思わしき声明文がADIのデータに埋め込まれていたことを聞く。声明文の内容は「自分の言動の結果に向き合え」「言葉は武器になる」というものだった。
声明文に載せられていた写真から居場所を解析し、突入する捜査官たち。ギャレットの姿はなかったが、燃やしかけのHDドライブを入手する。
ドライブの中には無数の人間のスマホやPCの個体番号が記載されていた。番号は成り行きゲームのハッシュタグの使用者リスト。
ギャレットの本当の標的は、「死ね」と書き込んだ参加者たちの方だったのだ。
すぐさま強制的にADIの非アクティブ化ボタンを押すリー捜査官。しかしそれが引き金となり、ゲームに参加した多くの人々の命が失われれた。
この悲劇的な事件について、法廷で尋問されるパーク捜査官。ブルーについて尋ねられると、彼女は自分を責め、事件から4ヶ月後に自殺したと語る。
しかしブルーは水面下でパークと手を組み、ギャレットの姿を追っていた。車に乗ったパーク捜査官がブルーから「彼を見つけた」とメッセージを受け取るシーンで物語は終了する。
感想
他の作品が大体1時間弱くらいの長さの中、この「殺意の追跡」は1時間半とちょっと長めです。内容もサスペンスちっくだったので、なんだか映画を見ているみたいでした。
でもこれが映画だったとして、この終わり方で終わられたら嫌だなぁ。連続ドラマだったむしろここから始まるところだもん。
これは、一応は「ドラマ」に枠組みされているブラックミラーだからできる作品だなとつくづく思いました。
この作品の要となる人工蜂型ロボットの”ADI”。これは近年世界中でミツバチの減少が問題視されているからこそ、すごくリアル。さらに物語の後半では、これがただのロボットではなく国民の監視をするためのドローンだったことが発覚します。
それをテロ行為の防止に役立てていたと作中語るシーンもあり、テロの多い国なんかは余計可能性ありそうだなと思ってしまいました。
で、その蜂型ドローンが殺人凶器に。この設定だけでも十分面白いけど、この話の本質は、犯人となるギャレットの言うところの「言葉は武器になる」ってヤツ。
現代の日本でも、SNSは日々過激言葉が飛び交ってる。この作品のハッシュタグじゃないけど、「死ね」って言葉も日常的に見る。
そしてこんな言葉を吐く大抵の人が、作中出てくる誹謗中傷のケーキを送り付けた保育士みたいに「冗談のつもりだった」で済ませちゃうくらいの、ほんの軽い気持ちなんですよねぇ。だから怖いんだよ。
自分の本名や素顔を背負っての「死ね」なんて決して他人に言えるものではないのに、匿名の「死ね」はこんなにも簡単に言えてしまうものなんですよね。ブラックミラー1-1話「国家」のテーマだった”悪意の麻痺“という言葉、そのものだなぁと感じました。
そういう意味では、犯人ギャレットの「自分の言動の結果に向き合え」「言葉は武器になる」って言葉は十分理解できます。やったことは最悪だけど。
実はこの作中に出てくる女性刑事の1人、ブルーは「シロクマ」の主人公の事件を担当したと明かしています。主人公の交際相手の男、少女を殺した時の写真や動画を撮っていて、それを見たことを機にブルーは現場に転属したいと考えたそう。
いやー、シロクマの時は正直、主犯じゃなく加担しただけでもこんなにされるのか…?と思っていたけど、この残虐性を知ったら納得。
ところでこの作品、続編があるって言われていたような気がするんだけど…このモヤッとした終わり方だったからただの噂かな?
テーマが面白かったし、刑事コンビの2人とも女性っていうのも面白かったので、もし続編があるなら期待してます。